映画と舞台のメディアミックスプロジェクト「東映ムビ×ステ」初のシリーズ作として2020年にスタートした『死神遣いの事件帖』がついにシリーズファイナルを迎える。6月13日に公開される映画『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』の見どころ、そして安井自身の5年間とこれからについて、真っ直ぐな言葉で語ってくれた。
6月13日公開
特別な能力を持つ死神遣いの探偵・久坂幻士郎(鈴木拡樹)が契約した死神・十蘭(安井)と江戸に暮らす人々の困りごとを解決していく『死神遣いの事件帖』。映画、舞台で人気を集めてきた”しにつか”シリーズが『死神遣いの事件帖終(ファイナル)』として6月13日に公開される映画。8月7日から9月15日にかけて東京・福岡・大阪・石川・京都で上演される舞台でファイナルを迎えることになった。
「しにつかシリーズは5年ほどやっていたので、今回の現場に入って『これで撮影所にはしばらく来ないのかな』と思ったりしました。パート1から考えると幻士郎と十蘭は別れては戻ってということが結構あったので、ラストシーンの撮影ではそれがフラッシュバックして、本当に最後なんだとグッとくるところはありましたね。この『死神遣いの事件帖』は、どこまでいっても幻士郎の明るさとエネルギーがすごく魅力的だと思うんです。今回もファイナルだけど、幻士郎の進んでいく感じが描かれていて。きっとあの町でああいうふうにこれからも生きていくんだろうと感じられたのがファイナルだけど、寂しくなくてよかったなと思いました」
今作に「だんだん人間っぽくなってきた」という十蘭のセリフがあるが、死神である十蘭はシリーズを重ねるごとに”人間味”を増し、より魅力的なキャラクターとなっているように感じる。十蘭の人間味という部分は、演じる上で意識した部分なのだろうか。
「十蘭は幻士郎と触れ合うことによって人間らしい部分がどんどん出てきて。それがほかの死神と違うところなので演じる上でもちろん意識もしましたが、僕自身が幻士郎、そして拡樹くんにどんどん魅了されていったからじゃないかと思います。2人の間のテンポ感もよくなったんですよね、拡樹くんは本番になるとスイッチをパチンと入れてやってくれるので、僕はすごくやりやすかったです」
死神の姿は契約者以外には見えず、普段の戦いでは幻士郎が持つ刀へ姿を変える十蘭だが、今作では幻士郎と共に戦うシーンがあり、それは作品の大きな見どころになっている。
「撮影が始まる10日くらい前に、今回は十蘭も殺陣をやりますって動画が送られてきて! 僕は初めて殺陣をやったのが1作目の舞台の時で、それ以来4年くらいやっていなかったんです。僕たちがやったのは殺陣というより刀を使ったアクションという言い方が正しいらしいんですけど、どちらにしろやったことがなくてめっちゃ難しかったです。2人で戦うので、中には幻士郎と十蘭の合わせ技みたいなのもあって、動画を見て『何これ⁉ 』となって。実際に京都の撮影所に入って撮影のない日に練習を入れていただいて、拡樹くんも付き合ってくれて一緒に稽古しました。拡樹くんはずっとやっている経験者なので覚えるのがめっちゃ早くて。聞くと、覚え方みたいなものがあるらしいんですよ。たぶん僕にとってのダンスみたいなことなんでしょうけど、今回一緒に練習や撮影をして『拡樹くんはやっぱりすげぇ!』と思いました。でも、自分なりに頑張ったところがあって! タタタタタッと走るんですけど、完成を見て『頑張って走ってる!』って思いました(笑)。走って回転してフレームアウトした後、実は勢い余ってズサーッとこけてるんですけどね。本編はこける直前だからカッコいいんですよ。フレーム外のところがメイキングカメラに撮られていたりするのかな(笑)?」
全身全霊で挑んだアクションシーンをはじめ、撮影を終えた後は思いがけない反響もあったとか。
「2人で戦うところは作品にとって大事なシーンだし、アクションってすごく見どころだと思うのでそのクオリティーを下げてはいけないっていう意識はめっちゃありました。ぜひアクションも楽しみにしていただきたいです。撮影を終えて東京に戻ったら、メンバーから『筋肉ついた? デカくなった』と言われました。肩周りとか、刀を振っているとどうしてもね! 僕、しっかり練習しましたから(笑)!」
5年間という長きに渡ったシリーズで1番の思い出を聞いてみた。
「いろんなことがありましたね。思い出はたくさんありますけど……京都の冬が寒いっていうことをしっかり学びました。映画の撮影は3作とも1、2月とか1番寒い時期だったので。今回の撮影では雪が降って。劇中にも映っていますけど、あれは本当に降っていたので『うわー!』ってなりました。シリーズで言うと、この5年でコロナ禍があったり世の中の変化や流れとともに歩んできた作品ではあると思います。ファイナルの撮影が終わってみんなで食事会をしたんですけど、パート2の時はとてもそんな状況じゃなかったし。そう考えると、本当に5年やったんだなって実感するというか。今回は京都のスタッフさんと打ち上げができたことが僕としては思い出深かったです。映画の3作品をずっと担当してくださったカメラマンやスタッフの方と乾杯できて、すごく嬉しかったです」
<続きは 日本映画ナビvol117をご覧ください。>
写真/竹中圭樹 文/田原知瑛
やすい・けんたろう
1991年7月21日生まれ、神奈川県出身。
近作に映画『REQUIEM~ある作曲家の物語~』(25年)などがある。
監督:柴﨑貴行 脚本:須藤泰司
出演:鈴木拡樹 、 安井謙太郎(7ORDER)、生駒里奈、梅津瑞樹、崎山つばさ
東映ビデオ配給
6月13日公開
Ⓒ2025 toei-movie-st