歳を重ねた男女が中学校時代の初恋相手と出会い、再び惹かれ合う姿を、堺雅人と井川遥が体現した『平場の月』。朝倉かすみの同名小説を『ある男』の向井康介が脚本化、 『花束みたいな恋をした』の土井裕泰が監督した同作は、大人の恋愛の愛惜を静かに描き出している。堺と井川はどんな思いで作品に向き合っていたのか。
11月14日(金)公開
——お2人は、近年だとドラマ「半沢直樹」で共演されていますね。
井川 その撮影の時に、同世代の及川(光博)さんと3人で「我々世代の等身大の恋愛作品ってないよね」という話をしていました。
堺 今回は、見事にそれができたのでとても嬉しいです。
井川 でも、堺さんはそのことを覚えてなかったんですよ(笑)。
堺 何か素敵な話をしたのは覚えてました(笑)。
井川 堺さんとは若い頃にもご一緒してるんですが、当時はまだそれぞれ独身だったんです。それが、こうしてお互いに人生の基盤ができて経験を積んだ今、この世代の日常の機微を描く物語で再会できたので、余計に嬉しかったですね。
堺 キャリアを積んだからこそ日常の大切さがわかるんですよね。井川さんは、(演じる)須藤葉子の部屋の生活動線がどうなるのか、鍵をどこに置くのか、冷蔵庫の中身は何かなど、よく考えていらして。そこに人生の重みが出ますし、日常を大切にされてる方じゃないと思いつかない気がします。
井川 須藤はつつましく、いろいろなものを削いで生活しているので、逆に残っているものが今の生活の全てですから。「ちょうどいい幸せ」というのがこの年齢の2人にはとても大事で、2人だけが作っていくものだという感じはしました。
——完成品をご覧になってお話されたことは?
堺 僕以外はよかったです(笑)。
井川 私もです(笑)。自分のところは反省しながら見てしまいます。
堺 改めて、僕の(演じる)青砥健将と井川さんの須藤がそこにいることができたのは、若いころを演じてくださった坂元(愛登)くんと一色(香澄)さんのおかげだと思いました。本当に感謝しています。撮影も彼らのシーンから始まって、その映像を見てから入れたので、こんなにやりやすいことはないと思いました。
井川 多感な学生時代、2人の関係性が本で読むだけではなくて立体的に多面的になって見られたというのは、ありがたかったですね。ロケ地もよかったですよね。原作の舞台になった(埼玉県)朝霞市や志木市でやらせていただけて。
堺 とてもいい町で、大好きになりました。町を歩くシーンや、駅前の繁華街での撮影などでもとても協力していただいて。
井川 (劇中に登場する)アサカベーカリーさんも。
堺 青砥の勤務先は、老舗の印刷会社さんに工場を貸していただいて、ご指導いただきました。本当にいい人ばかりでした。
井川 今は町がどこも近代化されていますけど、私たちが育った原風景が残っている感じがとてもよくって、学生時代の記憶が蘇ってきました。
<続きは、おとなのデジタルTVナビ12月号をご覧ください。>
写真/中村嘉昭 文/早川あゆみ ヘアメイク/[堺] 保田かずみ(SHIMA) [井川] 松田麻由子 スタイリスト/[堺]mick(Koa Hole inc.) [井川]青木千加子 衣装協力:[井川]ジャケット¥416900、シャツ¥237600、パンツ¥118800、シューズ¥141900(マックスマーラ/マックスマーラ ジャパン) ピアス¥1320000、バングル¥1980000、リング¥880000(クリヴェリ/内原ホールディングス)
いがわ・はるか
1976年6月29日生まれ、東京都出身。近作にテレビドラマ「拾われた男 Lost Man Found」(22年)「罠の戦争」「下剋上球児」(23年)、映画『さかなのこ』(22年)『ショウタイムセブン』『アフター・ザ・クエイク』(25年)。『見はらし世代』が公開中。
さかい・まさと
1973年10月14日生まれ、宮崎県出身。近作にテレビドラマ「半沢直樹」(13年、20年)「ダマせない男」(22年)「VIVANT」(23年)、映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17年)『北の桜守』(18年)『Dr.コトー診療所』(22年)。「VIVANT」 続編が26年放送予定。
