1月24日公開 東宝
記念すべきクランクインは、九郎(山﨑賢人)が暮らす質素なアパートの一室からスタート。本作はハードな忍者アクションパートと、福田雄一監督らしいコミカルパートが共存しているが、この日はアクション+コメディーという2度おいしいシーンでもある。無精ひげ&Tシャツ&半パンのゆる〜いスタイルで登場した九郎=山﨑は、まずは監督と楽しげに談笑。撮影の前にまずはワイヤーを使ったアクション練習が始まるが、朝イチからこれがなかなかのトリッキーさ。トイレの壁に両足を押し付けスルスルと移動するという、原作やアニメとほぼ同じ動きを再現していくが、軽くストレッチだけした山﨑は難なくこなしていく。軽々と動いているように見えるが壁のフチに足をかけた時、シャツの背中部分に美しい筋肉が浮き出る! これまでの山﨑のアクションの経験値の高さと、日ごろの鍛錬が垣間見られる瞬間だった。しかしあくまでこのアクションの目的は、トイレで用を足している途中のアパートの住人・川戸愛(木南晴夏)にトイレットペーパーを届けるためだけのもの。常に酔っぱらってベロベロの川戸は、「九郎く〜ん! 紙取って!!」と巻き舌目の大声でトイレの中から叫び、そのくせ「見たら殺すよ!」と容赦ない。だが「俺は忍び。不可能を可能にする」と大真面目に能力の無駄遣いを惜しまない九郎。2人の芝居のテンション感がイメージ通りだったらしく、「お2人とも今のでグーです!」と監督。続く「不可能を可能にする」という台詞の後、静かに目を閉じて集中力を高める九郎に「賢人くん! もう少しゆ〜っくり目を閉じて。ちょっと上向いて、そこで見開いて」と細かく演出をつけていく。「ゆっくり目を閉じるのって難しいな」と言いながらも、ドアップの画角に耐えうる九郎の顔面の強さはさすがであった。
撮影は順調に進み、いよいよ壁歩きのアクションへ。宙づりの状態で両足で勢いよく壁を踏み込むと、その音の大きさに監督が思わず「大丈夫か〜!?」と声をかけるが「大丈夫です〜」と涼し気な表情の山﨑。ワイヤーで固定されているとはいえ、カエルのように足を開いた状態をキープしながらのアクションは素人目から見てもかなりハード! アクション部も「これ結構きついっすよね。大丈夫ですか?」と気遣う。しかも途中で思わぬ障害物=シャワーヘッドが行く手を阻み、思わず「フフッ」と笑ってしまう山﨑に、監督も笑顔で一旦「カット」をかけるが、結局トータル2テイクでOKが出る。「スピードがちょうどよかった。いちばん理想の形だった」と満足気な監督だった。
この後は、同じくアパートの住人・大野を演じるムロツヨシが登場。原作に忠実に小汚いおじさん風に作りこんだ大野は、ムロのこだわりで歯も黒く汚すという再現度の高さだ。ここから楽しみにとっていたビールを勝手に飲んでしまった九郎に腹を立てた大野と、押し入れ一枚挟んでの攻防戦が繰り広げられる!(*ちなみに九郎と大野の部屋はなぜか押し入れを隔ててつながっているという設定)言うまでもなくムロは佐藤二朗と並ぶ、福田組最常連俳優。監督の〝オモシロ〟を誰よりも熟知しているムロは、段取りから全力で監督を笑わせにかかる。ビールを飲んだ飲まないで揉める2人のやり取りを見ながら、監督はずっと笑いっぱなし。
「続きは日本映画ナビvol.115をご覧ください。」
1994年9月7日生まれ、東京都出身。近作に映画『キングダム』シリーズ(19〜24年)『ゴールデンカムイ』シリーズ『陰陽師0』(24年)など。Netflixドラマ「今際の国のアリス」シリーズに出演中。
2000年8月29日生まれ、石川県出身。近作に映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』『六人の嘘つきな大学生』(24年)など。26年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK)に出演予定。