「大地の子」「白い巨塔」「華麗なる一族」など、社会問題に鋭く切り込んだ数々の作品で知られるベストセラー作家・山崎豊子の生誕100年を記念し、初期の代表作である「花のれん」をこの春SPドラマとして放送。女性興行師として奮闘する河島多加を演じる北川景子に、作品の見所や自身とも重なる役柄への思いを聞いた。
「花のれん」3月8日(土) 後9:00~10:54 テレビ朝日系
敬愛する山崎作品に初挑戦稀代の女性興行師の半生を描く
明治から昭和という激動の時代に、女手ひとつでショービジネスの世界を切り拓いた女性興行師・河島多加。山崎豊子が吉本興業創設者・吉本せいをモデルに、ショービジネスに人生を捧げた女性の生きざまを情緒豊かに描いた本作でヒロインを演じるのは、大河ドラマ「どうする家康」でお市と茶々の二役を見事に演じ第32回橋田賞を受賞するなど、役者として円熟味を増す北川景子。山崎作品への出演は初となるが、中学時代から読んでいたという作品への思いは深い。
「両親の影響で先生の作品を読むようになったのですが、人の心情とその時代の背景を、こんな手に取るように文章で表現する作家さんがいるんだと驚いて、そこからはまっていったんです。人間の美しい部分だけでなく、複雑な感情や、人に見られたくない汚い所をリアルに表現しているところも、私がひかれる理由です」
舞台は大阪・。多加は21歳で呉服店に嫁ぐも、夫の吉三郎は花街・寄席通いに明け暮れる。「いっそ、道楽を本業に」と夫婦で寄席商売を始めるが、吉三郎は愛人を作った上にあっけなく他界。夫が残した借金と一人息子を養うため、多加は持ち前の根性と商才で寄席の事業を拡大していく。
「子育てと小屋(劇場)の経営という二足のわらじで多加が奮闘する姿に『私もまだまだ。もっと頑張ろう』と、演じながら力をもらっていました。さらに、多加は仕事がうまくいけばいくほど、息子と心がすれ違ってしまうのですが、私自身も子育てと仕事の両立で悩むことが多く、そういう状況もすごく理解できて共感しました」
多加を演じる上で大事にしたのが、船場商人の間で使われてきた“船場言葉”。現代の大阪弁や京都弁とも違う流麗な言い回しが特徴で、関西出身の北川でも初めて聞くイントネーションが多かったのだとか。
「台詞の入った音源を聞きながら『こんなに違うんだ』と正直驚きました。シーン毎に自分の声を録音して音源と聞き比べながら、一音一音修正していく作業をコツコツと積み重ねていきましたが、発音に気を取られるとお芝居が緊張してしまうし、逆に芝居に集中すると音が不安定になってしまって、そのバランスが難しかったです」
山崎作品に縁の深い実力派俳優が多加の人生に関わる男たちを演じる
本作では多加の夫・吉三郎を伊藤英明、夫亡き後に多加が恋心を抱く紳士・伊藤友衛を上川隆也が演じるなど、山崎作品と縁の深い豪華共演陣も話題に。
「英明さんは、誰に対しても分け隔てなく本当にフレンドリーで、男女問わず愛される所も吉三郎役にぴったり。上川さんは、実際にお会いするまでは勝手にクールな方だと思っていたんですが、お話ししてみると時間がゆったり流れていくような優しく穏やかな方で。私の好きな『大地の子』の撮影時の面白いお話も教えていただきました」
さらに吉三郎亡き後、番頭として多加を支えるガマ口を甲本雅裕が演じる。
「甲本さんは『花のあと』(10年)という、私の初時代劇映画で夫婦を演じて以来、何度もご一緒している大好きな俳優さんです。甲本さんが「こうしたい」と思っていることを爆発させた時のお芝居が本当に素晴らしくて、現場で演技についてお話しする時間がすごく楽しかったです」
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