月刊テレビナビ おとなのデジタルテレビナビ

TV program

「熱中時代2・先生編」 水谷 豊

現在、BS松竹東急で放送中の「熱中時代」は、46年前に社会現象にもなった大ヒットドラマだ。老若男女問わず幅広い世代からの大反響を受けて、8月3日(土)からは続編の放送が決定。主演を務めた水谷豊が、その思いを語った。

新米教諭と生徒たちとの絆に日本中が涙した不朽の名作!

 「作品というのはすべてそうですが、見ていただくために作っています。今回の再放送で多くの方が見てくださっているのは、役者としてとてもうれしいことですね。46年も経っていますから、なかなか見ていただく機会がない作品になっていましたでしょ」

 水谷豊は満面の笑みでそう語る。

 「実は僕も、いま土曜日の放送を見てるんですよ(笑)。DVDは家にありますけど、わざわざ懐かしんで出してきて見るような年齢にはまだなってない。いまやっていることがいろいろありますからね。でも、放送というのは〝いま〟なので、素直にオンエアを楽しんでいます。自分の出演作品は、できたばかりのときはなかなか客観的に見ることが難しいんですが、さすがにこれだけ時間が経ってるので、『よくやってるな』と思いながら見ることができます。こうして取材を受けることで、自分自身も作品に浸れますよ(笑)」

 水谷が演じたのは、北海道出身でようやく念願の小学校教諭になった北野広大。受け持った3年4組の子どもたちに真摯に向き合う彼と、その同僚教諭たちの姿を軽妙かつ熱く描き、第1シリーズの最終回は視聴率40%超えを記録した。〝理想の先生像〟ともいわれる北野を、水谷はどうとらえているのか。

 「子どもを教えるということには技術が必要だと思います。大人と子ども、先生と児童という立場の差もあるから、つい技術に走ってしまいがち。けど、大人でも子どもでも、あくまでも〝人と人〟なんだというのは、忘れないようにしようと思っていました」

 ただ、それが理想であることもわかっている。

 「小学校の先生になった同級生に『水谷みたいな先生になりたくてさ』と言われたりもしましたが(笑)。『熱中時代』はPTAのことや教育委員会の在り方など、現実の厳しさみたいな部分も描けたかなと思っています。遠藤豊吉さんという教育評論家の先生が監修について、そのへんのバランスをとってくださっていました。あまり理想だけに走りたくないという思いがありながらやっていたのを覚えています」

 さらに第2シリーズでは、前シリーズのラストで北海道に帰っていた北野が教職に復帰、新たに2年生の担任になるところからはじまる。

 「最初と同じでは意味がないので、どれくらい成長しているかの加減が難しかったです。それに、子どもの学年を3年生から2年生に1学年下げたでしょ。2年生は、たけのこがまだ土から顔を出しただけの白い状態なんですよ。そこに北野広大がどんな色をつけていくんだろうという、そんな第2シリーズでした」

 ただ、意図的に自身の芝居を変化させることはなかった。

 「それはもう自然に。自分もいろいろ経験してきていますから、特に何を変えるということはなくていいかなと思っていました。子どもたちとどう接するのか、というのが常にテーマでしたからね」

 だからこそ北野は、多くの人を惹きつけたのだ。水谷自身、北野とは友だち付き合いができそうだと笑う。

 「彼は明るいし、近くにいたら楽しい時間を過ごせると思います。(『相棒』で水谷が演じている偏屈な切れ者警部)杉下右京の場合は、ちょっと難しいと思いますが(笑)」

 さすがに40年前とは社会のコンプライアンスが違うので、たとえばタバコの扱い方など現代の視点で見ると違和感もあるのだが、総じておおらかな時代だったと感じられる。

 「そうですね。優しい、いい時代に見えますね。北野広大のキャラクターがそうなんですけど、落ち込むんだけど落ち込み切れないんですよ。笑って泣けていいな、楽しく見られるドラマだなと、改めて思っています。それに第2シリーズは僕、『熱中時代・刑事編』の『カリフォルニア・コネクション』に続いて、主題歌『やさしさ紙芝居』も歌っているんです。そこは見どころ、聞きどころです(笑)」

 いまでこそ水谷の代表作の1つに挙げられる「熱中時代」だが、当初、テレビ局の上層部はこの企画に否定的だった。小学生を半年も撮影に拘束できるのかという危惧や、それ以前の水谷にドラマ「傷だらけの天使」(74年)などで不良のイメージが強かったからだ。彼に子どもとコメディーが似合うと見抜いたのは、水谷が大竹しのぶとW主演を務めたドラマ「オレの愛妻物語」(78年)を手掛けた演出家の田中知己だった。

 「僕は子ども好きだったのでこの企画を面白いと思いましたけど、局の番組を決めるいわゆる〝御前会議〟では役員のみなさんがNOだった。その中でお1人だけ賛成してくださったから実現したという、スリリングなはじまりでした(笑)」

 そして、今作から水谷のパブリックイメージが大きく変わったのだ。

 「以前は、僕やショーケン(萩原健一)さんは〝しらけ世代〟の代表選手みたいに言われてました。でも僕ら、ぜんぜんしらけてないんですよ。一生懸命でしたね、しらけることに(笑)。やる気はあるんですけど、そうは見えてなかったんだと思います。だから製作者側が、あえてタイトルに〝熱中〟なんてつけたんでしょうね。最初のころ、『(温泉地で有名な)熱海中学の話ですか?』なんて聞かれたこともありました(笑)」

 現在、水谷の演じたキャラクターとして多くの人が思い浮かべるのは、前述の杉下右京だろう。これだけ数多く〝ヒット作〟〝代表的な役柄〟を持つ俳優は珍しいといえる。

 「作っているときは、たとえば『視聴率が40%を超えるぞ』とか想像はしてないわけです。こういう現象が起きるのは、見てくださった方それぞれが自分の世界を作るくらい作品に興味を持って、世界を広げて楽しんでくださってるからなんですよ」

 さらに、作品作りのために常に思っていることがある。

 「いいメンバーと出会うことが大切です。ドラマ制作には大きく分けて、プロデューサー、脚本、監督とスタッフ、そして俳優と4つの要素がありますが、それがぜんぶそろえば大ヒットするんです。ただ、常にそこを目指してはいますが、いいかどうかはその人の感性ですし、結果的には見る人が決める。だから、そうなるまではわからないんですね。『熱中時代』がヒットしたのは、ある種、奇跡の集大成だったと思います」

 そんな作品が改めて再放送でも反響を呼んでいることは、今後の水谷豊の芝居への大きなモチベーションにもなるという。だが、特にそれを保ち続けることは意識しない。

 「芝居と日常の切り替えスイッチなどは特にないですし、作らないです。『相棒』の場合は撮影期間が半年以上と長いので『遠洋漁業に出るぞ』くらいの気持ちにはなりますけど(笑)、それくらいです」

 健康を保つためにやることも、特にない。

 「野放しです(笑)。食べるものに気を付けるということもないですし、日によっては1日1食だったりもします。運動についても、あるときトレーナーさんに『ふつうに生活できればそれがいちばん健康です』と言われて。だからもう、鍛えることは10年以上やってないです」

 それでも仕事にまい進できている秘訣とは?

 「仕事というのはどんな形であれ緊張しますから、日々は緊張と弛緩の連続なんです。それがふつうの状態になっていることがいいのかもしれないですね。あとは、自分を追い詰めないこと。『自分を責めることはない。必要なときは人が責めてくれるから』という意味のアインシュタインの名言がありますけど、まさにそれだと思います」

 7月14日に72歳になった水谷。

   「いままた北野広大を演じるとしたら?  もう退職してしばらく経つ年ですよね」

 と笑うが、自身の現役感はまったく衰えていない。常に美しくカッコよく作品作りに取り組み続ける、おそろしいまでのエンターテイナーだ。

RECOMMEND

RANKING

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5

RELATED

PAGE TOP

公式LINE友だち募集中!

TVnavi&おとなのデジタルTVナビはスマホでも楽しい! 誌面では掲載できなかった撮り下ろし未公開画像など、公式LINEでしか見れない特典がたっぷり!
公式LINE友だち追加