12月12日公開の映画『ロマンティック・キラー』でまったく新しいコメディー映画の主人公を演じ、体を張ったアクションシーンにも挑戦し、まさしく新境地を見せた上白石萌歌。インタビュー中、作品名や自分以外の役名もすべてフルネームで答えてくれる彼女。周りを思う気持ちから生まれる、彼女ならではの温かな座長像を伺った。
この冬公開される映画『ロマンティック・キラー』で、上白石萌歌が演じるのは〝恋愛キャンセル界隈〟の主人公・星野杏子。
「本当に新境地なので、自分に務まるのかと思いましたが、脚本が面白くて、ページをめくりながら笑ってしまって。原作の面白さが英勉監督の手にかかると、さらにコメディー要素が増幅して、この世界に飛び込んでみたいなという気持ちになりました。アニメも何日かにわけて見る予定が一晩で全部見てしまって。杏子が本当に面白いんです」
彼女の元に送り込まれた魔法使いのトラップで、かっこいい男の子が次々に現れる(!)状況下、「絶対に恋なんてしない」とロマンティックを拒否しつづける主人公が新たな視点をもたらすコメディー映画。そんな杏子の見せ場が、中盤のアクション・シークエンス。
「最初、想定している動きを一連でつないだ映像を見せてくださったのですが、『こんなのできるわけがない……』と頭が真っ白になりました(笑)。でも、撮影の1~2カ月前から、アクション部さんがたくさん練習をつけてくださって、少しずつ丁寧に撮影してくださったので、楽しみながらやらせていただけました」
今回のインタビューで彼女から最も多く聞かれた言葉が「楽しめました」。本誌前号の英監督のインタビューでも、撮影が深夜に及ぶ際、普通なら「頑張りましょう」というところを彼女は「楽しみ」と言うのが素敵だ、という話を伺ったばかり。そもそもバラエティー番組などでもネガティブな言葉を口にしないイメージがある。
「私自身は、あまりポジティブな性格ではないんです(笑)。自分の中でネガティブが生まれやすい体質だと思うので、それをあまり外に出さない方がいいのかなと。今日の現場の反省なども結構してしまう方ですし、ネチネチずっと考えてしまう性格です。そうは見えないですか? それは良かったです(笑)。もともとコミュニケーション能力が高い人間ではなくて、この世界に入る前までは人に心を開くまで時間がかかるタイプだったのですが、いろいろな現場でいろいろな方に出会っていくと、そういうのを取っ払った方がいいだろうなと。でも、無理にコミュニケーションをとると、それはそれで気を使われてしまいそうなので、あまり無理なく、現場が終始和やかでいられたらいいなと思っています。なので今回も、物語の中心にはいさせていただきましたが、特に座長という感じではなかったですし、とにかくムードメーカーがたくさんいたので、自然とみんなが照らしてくれた気がします」
<続きは、日本映画ナビVOL.120をご覧ください。>
写真/角守裕二 文/多賀谷浩子 ヘア&メイク/恩田希(資生堂) スタイリスト/道端亜未
2000年2月28日生まれ、鹿児島県出身。12年に俳優デビュー。17年に素性を隠してadieu名義で映画『ナラタージュ』主題歌を担当してシングルリリース。19年にadieuが当人であると公表し、同年より本格的に音楽活動を開始。近作に映画『366日』『パリピ孔明 THEMOVIE』(25年)、テレビドラマ「イグナイト -法の無法者-」(25年)など。舞台『大地の子』(2026年2月26日~ 3月17日予定/明治座)に出演予定。
