完全オリジナルの「令和サスペンス劇場」に登場する新作は〝サスペンスの帝王〟船越英一郎を主演に迎え、数々の名作が生まれた京都が舞台。元検事の弁護士・六角心平が、新たな出会いや再会を通じて弁護士としての使命に再び目覚め、難事件に立ち向かっていく。
3月29日(土) 後7:00~8:55 BS日テレ
どこか懐かしく、でも新しく、心に優しく染みるドラマにしたいと思います
——2時間サスペンス番組が減少傾向にあります。その点についてどうお考えですか?
僕がこの仕事を始めた頃に「火曜サスペンス劇場」(日本テレビ系)が始まりましたので、2時間サスペンスとともに歩み、2時間サスペンスに育てられて今日まで来ました。今各局から2時間ドラマ枠が次々と姿を消しており、僕を育ててくれた場所がなくなっていくようで寂しいです。2時間ドラマは日本が世界に誇れる文化のひとつだと思っていて、映画と同じような尺で1話完結の話をお茶の間の皆さんで観ていただけるこの環境を、なんとか守っていきたいなと思っているんですけどね…。あの頃は、今みたいにパーソナルにテレビを楽しむというより、家族だんらんの場にテレビがあり、コミュニケーションツールとして機能していたいい時代でしたね。今は、家族で視聴方法がそれぞれ違うかもしれませんが、観終わった後、みんなでドラマの感想を共有してもらえると嬉しいです。
——今作のヤメ検(元検事)の弁護士という役柄について思われたことは?
弁護士ものをやりませんかというお話をいただいた時、モデルにしたいなと思う友人が思い浮かんで。僕と同い年でこの物語の主人公と世代もぴったりだなと。セリフの中にその友人の経験談や、彼が僕にお酒を飲みながら話したことなどをプロデューサーさんに話して、それを脚本家の方に伝えていただいたんです。彼はヤメ検の弁護士ですごく優秀。モデルがいるととてもリアリティーが生まれるなと思いました。六角心平という人の生きざまや置かれている環境は、僕自身にとっても割とリアルなんですよ。視聴者の皆さまにも、ある人の人生をトレースしているところがあるんだと思って観ていただいても面白いかなと思います。
——今回の役の取り組みでこだわったことや、六角心平の生き方とご自身と重ねて感じることはどこでしょうか。
六角心平は僕とほぼ同い年ですから、僕の想いみたいなものを心平の中に投影しやすいと感じています。すごく演じやすかったです。冴え渡る推理力があるとか特技があるとか、スーパーマンでも天才でもない、僕と同年代で等身大の心平。これまで謹厳実直に生きてきたんです。検事時代は、自分の正義と信念を重ね合わせて仕事に邁進し、弁護士になってからは弁護士の業務はもちろん、経営者として事務所も切り盛りしてやってきた。企業戦士として家族を守るために一生懸命働いてきたのに、奥さんに理解してもらえず捨てられちゃう、かわいそうな男なんです。僕も含めて、世の男性は自分と重ねちゃうんじゃないかな。そして、バリバリ生きてきた女性たちにも「わかる、わかる!」と思っていただけるかもしれない。とても共感しやすい主人公で、僕自身も共感しております(笑)!!
——今作のみどころについてもお願いします。
「令和サスペンス劇場」という枠ですが、どこか懐かしくて、でも新しい感じがする。そして、とても心に優しく染みてくる、そんなドラマにしていきたいなと思っております。サスペンスドラマではありますが、エンターテインメントとして、魅力を詰め込めるだけ詰め込もうという思いも持ってやっております。人間をもう一度見つめ直したり、優しさについて考えたり、家族について想いを馳せたり、さらには年を重ねていくことはどういうことだろうと考えていただけたりと、いろいろなことを考えるきっかけになると嬉しいです。あと、京都ならではの暮らしぶりやトリビアも随所に散りばめてありますので、「京都っていいな、行ってみるか」なんて、そんな思いが皆さんの心に生まれたら、これ以上の喜びはないなと思っております。
ふなこし・えいいちろう 1960年7月21日生まれ、神奈川県出身。