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INTERVIEW

辰巳ゆうと

演歌だけでなく歌謡曲も歌いこなし、実力と容貌を兼ね備えた若手演歌男子として赤丸急上昇中の辰巳ゆうと。10月には最新ヒット曲「迷宮のマリア」を引っさげた全国ツアーの模様が、歌謡ポップスチャンネルでお目見えする。

 今年5月にリリースした8枚目のシングル「迷宮のマリア」はサビが印象的な曲だ。これまで以上にテレビや街中で耳にすることが多く、新たな代表曲に成長してきている。

「曲調も演歌とはがらっと違うロック調で、正直お客さんの反応に不安もありました。でも、いざ歌ってみたら、皆さんも手拍子をしてノリノリで聴いてくれるし、コール&レスポンスも盛り上がる。『マリア』を聞いてファンになって下さった方も多く、これから忘年会シーズンに向けて、名前の部分を誰かに変えて歌ったりして、盛り上がっていただきたいと思います」

 話を聞いたのは全国ツアー開幕の2日前。さぞ緊張感に包まれているのかと想像していたところ…。

「毎年ツアーの前は追い詰められていましたけど、今年はそこまで背負うことなく、楽しみでリラックスした状態です。7月にずっと劇場公演をしていて、お芝居も楽しいけど、心の中で『また早くいっぱい歌いたいな』って思っている自分に、改めて『自分は歌が好きなんだな』と気づかされたからなんです」

 例年の全国ツアーでは和太鼓やサックスなど新たなことに挑戦してきたが、今回はそれも封印する。

「お芝居やバラエティー的なことにも挑戦する中で、改めて自分とは何なのかと考えて。自分の軸はここにある、歌なんだよというのを見せていきたい。だから歌1本でいくのが今年のツアーのコンセプトです」

 そうなると気になるのがセットリスト(曲目)。「迷宮のマリア」のカップリング3曲は、同曲と同じ松井五郎や売野雅勇が作詞をしている。ともに70〜80年代に中森明菜や安全地帯、荻野目洋子らを手がけたヒットメーカーで、本誌読者が聴けばどこか懐かしく、ぐっと心をつかまれるに違いない。

「松井先生は等身大の僕が歌いやすい詞を書いて下さっていて、『僕はこう見えてるのか』と思うとともに、先生からの『こういう大人になれよ、初心を忘れちゃいけないよ』というメッセージも感じます。売野先生は映画のワンシーンを切り取るような詞で、1曲ずつ別のドラマを見ているよう。それも全てを語らずに終わるので、続きはどうなったのだろうと想像が膨らみますね」

 そんな中で記者が気になったのが、「君と生きたかった」にある「純情すぎた罰だったのか」という歌詞。辰巳といえばデビュー曲が「下町純情」、2曲目が「おとこの純情」と、〝純情〟がキーワードだったからだ。

「僕も『下町純情』でデビューして、まさか7年目で『純情すぎた』って歌うことになるとは思いませんでした(笑)。『伏線回収なのか?』と考えたくもなりますが、僕の中では別物と捉えていて。『君と〜』ではピュアすぎて大事な人を失ってしまう主人公を歌うけれど、『下町純情』を歌う時は今でも、デビュー当時のピュアな主人公の気持ちになりきって歌っています」

 青年と大人、どちらの感情も歌える年代になってきたということだろう。ツアーでは「下町純情」のような演歌ももちろん多数披露し、三波春夫ら往年の大歌手が歌ってきたセリフ入り歌謡曲「一本刀土俵入り」にも挑戦するという。

「座ってじっくり聴く曲も、スタンディングで一緒に盛り上がる曲も入れて、幅広い方に楽しんでいただきたい。これまで演歌歌手はコール&レスポンスをしちゃいけないとか、どこか秩序を乱しちゃいけない気持ちがありましたけど、先輩方が築いて下さった文化をリスペクトしながらも、自分たちの世代の新しい風も吹かせたい。演歌歌手がやっていないようなことは全部成し遂げたいというくらいの気持ちで、『マリア』はそのきっかけになる曲だと感じています」

 7年目で飛躍の時を迎えているのが伝わってくる。デビューは20歳の時で、まだ現役大学生だった。

「1〜2年目は大晦日と元日以外は毎日どこかしらで歌っていて、帰ったらすぐ爆睡して、起きたらまた出かけて歌って…。お陰で大学生の青春的な思い出はあまりできませんでしたが、その時の経験が今の自分につながっている。学んだのは、お客さんに楽しんでいただくためには、1回1回のステージで100%を出すこと。『今日はこのくらいで』というのは嫌だし、そこを妥協してしまうと、僕の全てが崩れてしまう気がするんです」

 そうして走り続けてきた彼も26歳になった。そろそろ恋のお話も気になるが、例えば〝マリア〟のような、なかなか本心を見せない小悪魔的な女性はどうなのだろう?

「僕はガツガツ追いかけたい派なので、じらされるほど燃える…かもしれないですね(笑)。だからマリアは相当魅力的な女性と思いますし、真っすぐにマリアを求めていく主人公も素敵だなと思います。さすがに歌詞みたいに『俺のこの腕に』とか『すべてをくれないか』とは言えないですけど(笑)、僕もそういう女性を見つけたいです」

 そして現在、多忙な日々の気分転換になっているのがサウナ。

「仕事で地方に行く時はスーパー銭湯を探して、昼と夜のステージの間に行ったりもします。名古屋のサウナでは中日ドラゴンズ戦を放送していて、お客さんがみんな熱く応援しているから、僕もこの試合が終わるまでは出られないなと観続けて。残念ながら負けてしまって、みんなが寂しい背中でサウナを出て行くのが名古屋ならではだなあとか、人間観察するのが楽しいんです。あと外気浴で整えている時に、無や素の状態で次のコンサートのアイデアが生まれてくることもあるし、スタッフと裸の付き合いで、仕事に対する意見を包み隠さず話せる場にもなっています。お風呂なんで変装しようがないですけど、僕だと気づかれることも全くないですね。コンサートをやっている土地の、スーパー銭湯のどこかに行けば、辰巳ゆうとが出没している可能性は大いにあります(笑)」

 そんな飾らない魅力も、コンサートではぜひ味わってほしい。

「テレビ放送は、コンサートを観に行きたくても行けない方や、たまたま観て下さる方にも届けられるので嬉しいです。テレビで見ても会場にいるような気持を味わっていただけるようなコンサートにしますので、ぜひご覧ください!」

たつみ・ゆうと
1998年1月9日生まれ、大阪府出身。中学1年生で長良プロダクション主催「ティーンズカラオケ大会」に優勝。2018年、「下町純情」でデビュー。23年、「星くずセレナーデ」で第65回日本レコード大賞作曲家協会選奨受賞。

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