『今夜、世界からこの恋が消えても』の道枝駿佑と三木孝浩監督が再タッグを組み、同作の原作者・一条岬の同名小説を映画化した『君が最後に遺した歌』が3月20日に公開。詩を作ることが趣味の水嶋春人(道枝)と、文字の読み書きをすることが難しい“発達性ディスレクシア”の症状を抱えながらも歌唱と作曲の才能を持つ遠坂綾音(生見愛瑠)。一緒に歌を作る時間を通して惹かれ合う2人の“10年愛”を紡ぐ。前作からおよそ4年ぶりの再会で三木監督が感じた道枝の俳優としての変化とは? 10年後の俳優像についても聞いた。
3月20日(金)公開
『セカコイ』に続き2度目のタッグ今作では〝受けの芝居〟に挑戦
――今作『君が最後に遺した歌』(通称『君歌』)の印象と、演じられた春人について教えてください。
道枝 率直に切ないなと思いました。でも、それでも前に進もうとする春人を応援したくなるような温かさがある作品だなと思いましたね。春人はわりと普通の少年で、僕も自分のことを特別に何かを持っている人間ではないと思っているので、僕なりの等身大を意識して演じたといいますか。あとは繊細さがある役でもあったので、そこは常に試しながら臨んでいました。
――三木監督は今回も作品に入る前に道枝さんへお手紙を渡されていたんですか?
三木 はい、今回も「こういうキャラクターのイメージです」ということを書いたお手紙を渡しました。
道枝 手紙には「詩のように流れていく映画にしたいから、その時々の感情を素直に表現してくれたら嬉しいです」といったことを書いてくださっていたんです。僕は考えすぎるタイプで、春人についても「どんな人物なんだ?」ってなることがあったので、そういう時には常に持ち歩いていた手紙を読み返して「こういうことだよな」って初心
に戻っていましたね。
――そんな道枝さんを三木監督は、どうご覧になられていましたか?
三木 道枝くんとは2022年の『今夜、世界からこの恋が消えても』(通称『セカコイ』)で一度お仕事をしていて、そこで感じた彼の良さをさらに伸ばしたい、どこをプラスしたらいいかなと考えた時に出てきたのが、〝受けの芝居〟の部分だったんです。『セカコイ』で演じた透は、どちらかというと聖人のように誰かを思って自分の身を捧げていたキャラクターだったんですけど、春人は(生見愛瑠が演じるヒロインの)綾音を好きで魅了されている一方で、自分の才能を信じきれずにモヤモヤしていて、うらやましさと諦めが渦巻いている。今回はそうした一面的じゃない複雑な感情を表現してほしいなという話を道枝くんにしたら、見事に実現してくれました。道枝くんも最初はやっぱりかなりプレッシャーがあったのか、クランクイン前に会った時には「成長した姿を見せるんで!」と言われて。
道枝 言いました、言いました(笑)。本読みの時ですよね?
三木 そうそう。「おっ、自分でハードル上げた!」と思って(笑)。その決意表明がちょっと楽しかったです。そう言うことで自分自身を追い込んだ?
道枝 そういうつもりはなかったんですけど、今、言われて初めて「俺、追い込んでたんだな」って気付きました。
三木 無意識か(笑)。道枝くんとは前にもこの話をしたことがあるけど、『セカコイ』の時に、結局本編には入っていないんですけど、彼が大きな感情表現をするシーンを撮ったんです。でもその時に本人の中ではうまくできなかったみたいで、ずっと悔しさがあったんだよね?
道枝 はい、ありました。
三木 だからこそ「今回こそは」って懸ける思いがあったのかなと。先ほど道枝くん自身も言ったように、今回は考えすぎるんじゃなくて、ちゃんと春人のその時、その時の心の動きというか感じるものを最大限に増幅してリアルに演じてくれていたので、そこは確実に役者としてもう1、2段階、成長した部分だなと思いましたね。
――事前に作り込むよりも、その場で感情を出す方が絶対に難しいですよね。
三木 そう、難しいんですよ。瞬発力が必要で、そのためには自分の中身というか心の動きのようなものを、常に開いて出せようにしておかないといけないですし。そこを道枝くんはちゃんとクリアできていたので、素晴らしいなと思いました。
道枝 僕としてもこんなに泣き芝居が多い作品は初めてだったので、常に〝受け〟のアンテナを張っていた記憶があります。
三木 でも道枝くんって繊細そうに見えて、実はすごくタフな気がするんだよね。(なにわ男子の)ライブツアーの合間に撮影していたからかなり大変だったと思うんですけど、彼はいつも「おはようございま~す」って感じでフラットなんですよ。「昨日もライブで精根尽き果てました~」って感じに引きずることを絶対にしないんです。
道枝 いやぁ、大変だったり忙しかったりすると逆に気合いが入るというか、「もうやるしかない」って気持ちになるというか。そうしないと終わらないし(笑)。
三木 なるほど、仕事のハードさに負けないために気合いでガードをしていると。
道枝 はい。
三木 そんな中で今回は繊細さを求められていたから、ガードを全部下げた状態で全く違うアプローチをしなきゃいけなかったわけで。それは確かに大変だったよね。
道枝 そうなんですよ! 今までずっとそうやって感情をガードして生きてきた人間なので、いざ外せと言われたら「なかなか外しにくいなぁ…」みたいな(笑)。なので、徐々に柔軟しながら開いていっているという感じでした。
三木 心のストレッチを(笑)。
<続きは、日本映画ナビVOL.121をご覧ください。>
写真/竹中圭樹(アーティストフォトスタジオ) 文/松木智恵 ヘアメイク/[道枝]miura(JOUER) [三木]小林雄美 スタイリスト/[道枝]壽村太一 [三木]内田あゆみ
原作/一条岬 監督/三木孝浩 脚本/吉田智子 音楽プロデュース/亀田誠治 出演/道枝駿佑、生見愛瑠、井上想良、田辺桃子、竹原ピストル、岡田浩暉、五頭岳夫、野間口徹、新羅慎二、宮崎美子、萩原聖人
配給/東宝 3月20日公開 ©2026「君が最後に遺した歌」製作委員会
みちえだ・しゅんすけ
2002年7月25日生まれ、大阪府出身。21年に、なにわ男子としてCDデビュー。近作に、映画『今夜、世界からこの恋が消えても』(22 年)『青春18 ×2 君へと続く道』(24年)、テレビドラマ「マルス-ゼロの革命- 」(24 年)「キャスター」(25 年)など。
みき・たかひろ
1974年8月29日生まれ、徳島県出身。00年よりミュージックビデオの監督として活動を開始し、10年、映画『ソラニン』で長編監督デビュー。近作は『アキラとあきら』(22 年)『知らないカノジョ』(25 年)など。『ほどなく、お別れです』が2月6日公開。
