11月21日に公開される映画「TOKYO タクシー」は、2022 年のフランス映画「パリタクシー」に触発され、舞台を東京に移して描かれた山田洋次監督の最新作。石塚慶生プロデューサーと房俊介プロデューサーに作品ができあがるまでのお話を伺った。
11月21日(金)公開
企画◆石塚慶生
――企画の経緯を教えてください。
おかげさまで好評を頂いた弊社配給の『パリタクシー』を見て、僕自身も大変心を動かされまして。すぐに海外セールスの部署にリメイクできるか確認してもらって、企画書を進めていたんです。そうしたら、山田洋次監督も『パリタクシー』に触発されて東京を舞台にした映画を考えていると。それで、僕は山田さんの作品に関わらせていただくのは初めてでしたが、一緒にやったらどうかということになったんです。
――撮影現場はいかがでしたか?
山田組は初めてでしたから、自分が勉強したい気持ちもありまして、ほぼ現場に伺いました。木村(拓哉)さんもおっしゃっていましたが、「ああ、映画を作っているな」という実感と喜びの押し寄せる現場で。もちろん脚本はあるのですが、午前中にメイン・スタッフを集めて、今日これから撮るシーンについて皆で話し合うんです。
――時間的な余裕も含め、そこまでできる作品は少ないですね。
そうなんです。スタッフも皆、考えてきているから、いろいろなアイデアが出て、そこでさらに脚本を膨らませてから撮影に入るんです。これは豊かだなと思いました。撮影に入ったら、山田監督は役者さんとも「脚本にはこう書いてあるけれど、この部分を付け加えてみたらどうか」とか「この台詞はもっと優しく言ってみたらどうか?」など、細かなコミュニケーションをずっとやっていて。カメラを回すまでのリハーサルに長い時間をかけられるんです。
――これまでの山田作品とは少し違った、洋画的な香りのする作品ですね。そういう新しいことをベテランの山田組スタッフの皆さんがやられていて。
特に助監督チームは新しいやり方を本当に日々研究されていました。今回はタクシーの車内シーンが多いので、密室の連続をどう面白くするかは、美術や撮影のアングルの切り方にかかってきます。この作品はある1日の話ですから車内の日の当たり方も変わってきますし、非常に細かいディテールが大事になってくる。撮影部はじめ、スタッフの皆さんは、とんでもなく研究されたのではないかと思います。
プロデューサー◆房俊介
――今回の『TOKYOタクシー』、木村拓哉さんは娘の高校の入学金に悩む普通の父親役です。これまでにない役ですね。
山田さんも「木村くんは、こういう役をやってくれるだろうか」と気にされていました。そもそも『グランメン・パリ』の映画の番宣で木村さんがテレビ番組にたくさん出られていたのですが、その中で、ラーメン屋さんで今も現役で働いているおばあちゃんが木村さんのファンで、彼女のもとをサプライズで訪れるっていう企画があったんですよ。
――最後、木村さんのコンサートに招待されていましたよね。
そうです。山田さんもあの番組を見て、木村さんのサービス精神や、くしゃっと笑う笑顔を引き出したい、それを盗み撮るようにして撮影したいとおっしゃって。「ああいう木村くんは、映画じゃ見たことないんじゃないかい?」って。
――ご一緒されていかがでしたか?
監督は、撮影中もそうですが、特に完成してから、会う人会う人に、ドライバー役が木村さんで本当によかったと言うことをお話しされています。監督、倍賞さん木村さん、3人の温かくユーモアたっぷりのやり取りが、そのまま映画の空気感として映し出されているように感じます。監督が盗んででも撮りたかった笑顔は、何度見てもつられて笑いホッコリします。
<続きは、日本映画ナビVOL.119をご覧ください。>
文/多賀谷浩子
「TOKYO タクシー」
原作:映画「パリタクシー」(監督 クリスチャン・カリオン)監督・脚本:山田洋次 脚本:朝原雄三 出演:倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴、イ・ジュニョン、マキタスポーツ、北山雅康、木村優来、小林稔侍、笹野高史 松竹配給 11月21日公開
©2025 映画「TOKYO タクシー」製作委員会
