トランスジェンダーを巡る知られざる歴史
11月14日(金)公開
1965年、高度経済成長期真っただ中の東京。セックスワーカーの取り締まりを厳格化する警察が困っていたのがブルーボーイたちの扱い。彼らは性別適合手術を受けて女性の体になっているものの、男性戸籍のままで売春をするため摘発対象外だった。そこで警察は、彼らの手術を手掛けた医師を優生保護法違反で摘発する。実際に起きた事件と裁判に基づいて、戦後日本におけるトランスジェンダーへの差別と偏見、それに立ち向かう当事者たちの姿を描く骨太なヒューマンドラマ。少し調べるとこの事件がどういう結末を迎えたかわかるのだが、本作はその結末よりも重要な、当時の性的少数者を取り巻く状況や既存のジェンダー観でしか物事を考えられない人々の息苦しさを描き出しているところが出色。本作の大きなテーマとなっているのが基本的人権の1つ「幸せに生きる」ことの意味。性的少数者を主人公にしながらも、このテーマは誰もが追求することだけに、見る人に深いインパクトを与えるはずだ。
ここに注目! このテーマで最も重要視すべきなのは当事者性
自身もトランスマンである飯塚花笑監督が、事件当時の資料群にインスパイアされて生まれたこの企画。出演者、ブルーボーイたちを演じる役者はトランスウーマンやゲイであることにこだわった。それぞれ経験が浅いようには思えぬ高い演技で魅せる。
文/よしひろまさみち
©2025『ブルーボーイ事件』製作委員会
