自分が認められることに必死なあまり、家事や育児をないがしろにしてしまう残念な夫・賢太と、そんな夫にキレつつも経済・精神の両面で支え、家事・育児もこなす妻・朝子。だが、反抗期真っ只中の娘・蝶子や不登校気味の息子・晴太など、待ったなしの家族の問題に朝子のイライラは増すばかりで…。脚本家・映画監督の足立紳が、自身の家族をベースに描くほぼ実話(⁉)のホームドラマ「こんばんは、朝山家です。」。衝突不可避な夫婦の日常を描きながらも、その根底に家族の愛情と他者への優しいまなざしが流れる本作で、妻の朝子を演じる中村アンと夫の賢太を演じる小澤征悦に、作品の魅力や見どころを聞いた。
毎週日曜 後10:15〜11:09 ABCテレビ・テレビ朝日系
会話にライブ感があるのでリズムを取りながら集中してシーンに向かっています—中村
カメラが僕の後ろをついてくるドキュメンタリーっぽい撮り方も面白かったです—小澤
——キャラクターを演じる上で大事にされていることは?
小澤 大前提として、僕はまず演じる上で相手の台詞をきちんと聞くようにしています。足立さんの脚本で特に素晴らしいなと思うのは、会話劇としての面白さ。特に、相手の台詞の中にあるひとつのキーワードが、次の人の会話のポイントになることで話がつながっていくんです。だからきちんと台詞を聞くことが大事になるなって。
中村 私も、相手のお芝居をきちんと「受ける」ことは大事にしていますね。足立さんが脚本と演出もされているのですが、朝子については思っていた以上に、強めに言葉をぶつけていいんだというのが最初は驚きでした。また、現場で生まれたアイデアに臨機応変に対応する瞬発力も大事だなと感じています。
小澤 役の上では、賢太は承認欲求強めで、煮え切らないところがある人物なんです(笑)。でも、それを普段の僕の声で演じてしまうと少しイタい感じになってしまうので、声のトーンはやや高めに。あと、ちょっと内股気味にしています(笑)。実は賢太って「そうだけどさあ」とか「そんなことないけどさ」って、人に言われたことに対して必ず1回肯定か否定をするんです。
中村 確かに。
小澤 人って相手が言ったことに対して、すぐに理路整然と返せないから「そうだけどさあ」って言いながら、実は次の言葉を考えているんだなって。そういう日常会話っぽい掛け合いも、 演じていて新鮮で。
中村 会話にライブ感がありますよね。あとは結構ワンカットの撮影も多いので、お互いリズム取りながら集中してシーンに向かうとか。
小澤 そこは少し映画っぽいですよね。関係性がそのままが出てしまうからこそ、相手をちゃんと思ってお芝居をすることがより重要になってくる。
——これまでの撮影で、特に印象に残っているシーンは?
中村 第1話の冒頭で、賢太が脚本を書いたドラマの初回放送を、家族みんなで見ようとする場面ですね。
小澤 そうそう。あそこは台本4シーン分をワンカットで撮影したんです。最初にやると聞いた時は、僕もちょっと混乱しました(笑)。
中村 撮影の序盤だったこともあり、刺激的でしたよね。
小澤 あそこは、演じている僕の後ろをカメラがずっと追いかけるという、ドキュメンタリーっぽい撮り方も面白かったです。別のシーンでもワンカット撮影がありましたよね。2人が会話している最中に朝子さんがトイレに入ったのに、賢太はそのままトイレのドアの前に立って、そこで会話するという。
中村 朝子はトイレの中で、扉越しに。
小澤 でも、日常生活ってそうだよなって、はっと気づかされるというか。
中村 話をしたいけど時間がない、そんなバタバタした中での夫婦のやり取りって感じでしたよね。
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写真/福本邦洋 文/高橋美樹
なかむら・あん
1987年9月17日生まれ、東京都出身。近作に「約束〜16年目の真実〜」(24年日本テレビ系)「青島くんはいじわる」(24年テレビ朝日系)「キャスター」(25年TBS系)「災」(25年WOWOW)、映画『グランメゾン・パリ』(24年)ほか。
おざわ・ゆきよし
1974年6月6日生まれ、アメリカカリフォルニア州出身。近作に「永遠についての証明」(25年NHKBS・BSP 4K)ほか。「サタデーLIVEニュースジグザグ」(日本テレビ系)でナビゲーターを務める。映画『ベートーヴェン捏造』(9月12日公開)が待機中。