内田英治監督最新作は、北川景子を主演に迎えたたくましい母親の物語。北川演じる主人公・夏希と共に、危険な夜の街で生きる多摩恵には実力派俳優の森田望智が扮し、刺激的なシスターフッドを体現する撮影現場の様子をお届け。
11月28日(金)公開
2024年11月下旬からスタートし、年末ギリギリまで約1カ月間の撮影となった内田組『ナイトフラワー』。子供2人と共にたくましく生きる母親・夏希(北川景子)だったが、どんなに働いても生活は苦しいまま。ギリギリまで追い詰められた彼女が、偶然ドラッグの密売現場を目撃したことで運命が大きく変わっていく。夜の街で知り合った格闘技選手の多摩恵(森田望智)と手を組み、夏希はドラッグの売人として危険な夜の街を走り出すが……。
オールロケとなった本作は神奈川県の繁華街を中心に、さまざまな場所で連日ロケが行なわれていた。撮影も後半にさしかかったこの日は北川演じる主人公の夏希と、森田演じる多摩恵のある重要なシーンを撮影。12月の寒い夜に完全ナイターロケ&雨降らしという、なかなかハイカロリーな撮影である。度重なるトラブルからさらに金が必要になった夏希は、意を決して夜の街を仕切るサトウ(渋谷龍太)の元へ多摩恵と共に向かい、直談判。目をむいて驚く多摩恵から、夜の街で詰め寄られる……というシークエンスである。 ロケ地となった飲食店裏の路地は、日本であることを忘れてしまいそうな味わい深いロケーション。古いビルの裏かなり雑然としており、辺りには飲食店から出る煙や独特の匂いが立ち込めている。散水車で冷たい雨が降らされ始めると一気に気温が低下。北川と森田の体力を鑑み、5回戦(5テイク)がリミットだろうという判断が下された。夜も深まるにつれ、リアルな夜の世界の住人の方々が行き来し始める街。そんな心地いい緊張感の中現れた2人は、撮影も後半とあってすっかり打ち解けた様子。スタッフから細かい段取りを説明されるが「うまくいくかなぁ」と屈託のない笑顔を見せる森田は、多摩恵とは別人のような愛らしい雰囲気だ。だがいざ撮影が始まると、2人のギアの上げ方に驚愕することとなる。
「あいつらとの距離感間違えたらやばいんだって!!」と本気で夏希を責める多摩恵の言葉を、最初はただ黙って聞いているだけの夏希。だが「家族になってほしい」と静かに一言告げた後、堰せきを切ったように子供たちへの想いがあふれ出す。「子供たちに未来見せてやりたいねん!」多摩恵の肩をつかみ、必死の形相で懇願する夏希に気圧されたように逆に黙り込む多摩恵。激しく降りしきる雨と涙が同化し、北川の美しい顔がグチャグチャに乱れるが、そこには作られたものではない圧倒的な美が確実にカメラに捉えられていた。「カット」がかかるとスタッフが飛び出し、全身ずぶ濡れの2人をすぐさまケア。だが当の2人は互いの熱演を労うように、笑いながら抱き合う。それでもタオルを頭からかぶり急ぎ足でロケバスに避難する2人の体が、寒さのため小刻みに震えていたのはしっかりと見てとれた。
<続きは、日本映画ナビVOL.119をご覧ください。>
文/遠藤薫
「ナイトフラワー」
原案・脚本・監督:内田英治 出演:北川景子、森田望智/佐久間大介(Snow Man)、渋谷龍太/渋川清彦、池内博之/田中麗奈、光石研 松竹配給 11 月28 日公開 ©2025「ナイトフラワー」製作委員会
