常に役と自分は違うから、瞬間のリアルな気持ちが頼り
10月13日 スタート 毎週月曜日 後10:00〜10:54(初回は〜11:09までの拡大版) 毎週月曜 カンテレ・フジテレビ系
当たり前のことなんて何1つないから、“今”を逃したくない。
今年はNetflix配信の映画『新幹線大爆破』が世界80の国と地域でトップ10入り。さらに24年の主演映画『碁盤斬り』はフランスでもヒットするなど、世界市場でも評価を集めている草彅剛。2年半ぶりとなる連続ドラマで遺品整理人を演じる上で感じていること、常に目の前の表現に全力で邁進できる理由に、今の肉声と過去の発言とともに迫ります。
ドラマ「終幕のロンド —もう二度と、会えないあなたに—」で草彅は、妻を亡くし、6歳の息子を1人で育てながら、遺品整理人として働くシングルファーザーの鳥飼樹を演じている。 「1話の回想シーンで、走るシーンがあって。ト書きでは本当にちょっとなんだけど、実際の撮影ではめっちゃ走ったんですよ(笑)。クランクインした直後くらいに撮影したんだけど、とんでもなく走って、そこで俺は『いいひと。』(97年)のことを思い出したりして。今の樹は通勤でマウンテンバイクに乗っているんだけど、それも(『僕の歩く道』(06年)で主人公の)テルがロードバイクに乗っていたりしてたなとか、思ったりした。撮っているドラマは全然別の作品なんだけど、ふとそういう過去の記憶がフラッシュバックしたりするんだよね。だから、カンテレさんの僕のドラマの集大成だなって感じがしてます」
「いいひと。」からの「僕」シリーズ(03・04・06年)、「37歳で医者になった僕〜研修医純情物語〜」(12年)、「戦争」シリーズ(15・17・23年)に続くカンテレ制作の本作。演出・プロデュースを手掛ける三宅喜重監督は、草彅初主演連続ドラマとなった「いいひと。」の現場で、三宅がADをしていた頃からの間柄。「嘘の戦争」(17年)時にも「1話のぬかるみの中を走る駅伝のシーンで、ステディ(カメラ)がない時代なので、ガラガラのついた台の上にカメラマンさんが乗って、それを引っ張って撮ってたんですね。それでそれを引っ張っていたのが三宅さんで。下がぬかるんでいるもんだから、なかなかうまく引っ張れなくてね、星(護)監督に怒られていたのを覚えてますよ(笑)」と語っていた。
脚本は、草彅とは高評価を集めたドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(23年)に続くタッグとなる高橋美幸のオリジナル。自らも心の傷を抱えている樹が、樹を助けてくれた遺品整理会社の社長(中村雅俊)のもとに集う癖の強い従業員たちや、母親(風吹ジュン)が生前整理を依頼したことから樹と知り合う絵本作家・真琴(中村ゆり)、不妊治療に非協力的な真琴の夫(要潤)と旧い価値の権化のようなその両親(村上弘明・小柳ルミ子)らと相対しながら、身近な人をなくした遺品整理の依頼者たちの心に寄り添っていく、伏線だらけの緻密なアンサンブル・ヒューマンドラマになっている。
「いつも役はそうなんですけど、当たり前に自分とは違うわけで。『戦争』シリーズの時だって自分ならあんなすごい復讐はしないですし。今は撮影も中盤くらいまで進んでいるんですけど、樹についても正直、“よく分かんないなぁ”と思ってる。かなり余白がある役なんだけど、すごくお節介なんですよね。自分に課された仕事以上に、顔を突っ込んでいって、人のことを想って突き進んでいっちゃうところがある人。そういう面では、ちょっと今の時代と逆行したような感じで。今は自分の好意で何かをする場合でも、捉え方によったら、迷惑だったり、おかしなことになっちゃうような時代じゃないですか。そういう古くさい側面と同時に、過去のトラウマも抱えている役。樹の苦しみや気持ちを表現するシーンの撮影は、いつもは自分のことを“つよちゃままろ”なんて呼んでふざけている自分でも、ちょっとシリアスにシフトしてますね。そういう時は、撮影所の雰囲気も自然とその感じになって、スタッフの皆さんも淡々と撮影の準備をしてくれるので。だから、みんなで雰囲気を作っているところがあるなと」
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撮影/西村彩子(SELF:PSY’S) 文/渡辺史 ヘアメイク/荒川英亮 スタリスト/栗田泰臣
1974年7月9日生まれ、埼玉県出身。91年、CDデビュー。近作に「青天を衝け」(21年)「ブギウギ」(23〜24年)「罠の戦争」(23年)、映画『ミッドナイトスワン』(20年)『碁盤斬り』(24年)『新幹線大爆破』(25年)。主演舞台『シッダールタ』(東京・11月15日〜12月27日、兵庫・26年1月10日〜18日)が公演予定。
