国民的刑事ドラマ「相棒」のseason23がはじまっている。今期の特徴や2人のことを、水谷豊と寺脇康文に聞いた。
テレビ朝日系 毎週水 後9:00〜9:54
亀山くんはとても付き合いやすい「相棒」 ——水谷
何のために刑事をやるのか、右京さんが教えてくれた——寺脇
——まずは第1〜2話の感想を教えてください。
水谷 今回もまさにいまの世の中の出来事を反映したものになりました。「相棒」の基本がここにあるというような社会派エンターテインメントでしたね。
寺脇 本当に。
水谷 これ、「相棒」ではよく起きるんですよ。裁判員制度も、現実に導入されるよりも「相棒」のほうが早く取りあげていました(season6第1話「複眼の法廷」)。放送前後に似た事件が起きたりもします。
寺脇 放送前後に起きた事件でも、ストーリーを構想したのはもっと前ですものね。
水谷 実際の警視庁の150周年に触れたのも、我々にとってはリアルでいいなと思いました。どうやって警視庁ができたのかという興味深いお話からはじまって、警察官というものの基本に触れていました。
寺脇 警視庁の前でロケしていると、出たり入ったりする警察官の方たちが、みなさんニコニコしてくださって。
水谷 「相棒」を見て警察官になったという方のお話を聞いたことがあります。ありがたいですね。
——season16第19話「少年A」に出演された加藤清史郎さんが、同じ高田役で再登場されました。
水谷 最初に会ったのはその前、まだ小学生のときでしたね(season11第18話「BIRTHDAY」)。今回はジョークを言い合えたりしたので、「成長されたなあ」と思いました(笑)。
寺脇 僕は初共演でしたけど、すごい好青年でした。芝居の取り組みも真面目で、創は殺人事件を復習するシーンで薫をナイフで刺す真似をするのですが、リハから毎回全力で刺すので、「痛い!」と思って(笑)。僕は腹筋に力を入れてましたよ。
水谷 真面目な顔をして面白かったりもします。実は彼(加藤清史郎)、児童劇団の後輩なんですよ。ですから冗談で、「清史郎いいよ」とか先輩ふうに言ってました(笑)。お芝居は実際にとてもよかったですから。
——創は薫に、自分のほうが右京の相棒にふさわしいと思ったと語りましたが、どう思われました?
寺脇 若いのに右京さんのすごさをわかっていることには「いいじゃん」と思いました(笑)。「右京さんに目をつけたなんて見どころあるよ」って。まあ、譲らないけどね(笑)。
水谷 右京の後を追って警察官になったという点は、うれしかったですねえ。
——いまとなっては右京と薫の絆はとても強固ですが、もしお互いに出会ってなかったら、どうなっていたと思いますか?
水谷 どうでしょうねえ……亀山くんの前の人たちは全員いなくなって、右京はあの部屋に1人でいた。おそらく、こんなに日夜事件に向かってはいなかったと思います。長期休暇をとってロンドンに行くとか、もっと淡々と過ごしていたのではないでしょうか。1人でも特命係でやっていたとは思いますけど、ほかに任せられるものは任せていたと思います。
寺脇 薫はきっと、ずっと伊丹(憲一/川原和久)と張り合いながら、手柄を立てることだけを考えるつまらない刑事だったでしょうね。右京さんから学んだことは大きいですから。何のために刑事をやっているのか、わからせてくれた人です。
水谷 右京の正義というのは、警察官になると決めたときから、いついかなるときも変わってませんからね。ただ、やはり小野田官房長(岸部一徳)との関係からはじまって、あんなことまで起きて、陸の孤島である特命係に追いやられて(season1第11〜12話)。本来なら警察を辞めてもおかしくなかったかもしれませんが、最初の思いは捨てられなかった。まっとうしなければと思ったんでしょうね。
——いま右京が、たくさん捜査に向かったり、感情を表に出すようになったりしたのは、相棒のおかげということですね。
水谷 そうですね。人というのはそういうものですからね。おそらく、以前のままだったら、角田課長(山西惇)も近寄ってきませんでしたよ。
寺脇 薫はずっと、右京さんに教わった正義をブレずにまっとうしてきたんだと思うんです。サルウィンでもね。ただ、まだ迷うところもあって、でも今回の第2話の最後で、見失ってしまいそうなときのために相棒がいるんだと言っていただけて。もう、豊さんに言っていただいたのか右京さんなのか、わからなくなっていました。やっぱり、帰ってきてよかったなと思っています。
水谷 右京も、ぶつかろうがどうしようが、相棒が長くいてくれることはうれしいと思いますよ。歴代それぞれの相棒に思いはあるでしょうけど、最初に長くいてくれたのは亀山くんです。
——薫が復帰して3年になります。不在だった時期の変化、復帰してからの変化を感じられますか?
水谷 基本的には変わっていないです。いまの右京にとって、亀山くんはとても付き合いやすい相棒だと思います。もし違う新しい人が来ていたら、右京はいまごろ辞めてるでしょうね(笑)。
寺脇 ほんとに帰ってきてよかった!(笑) 右京さんも、具体的に「ここが」というのはないのですが、たまに見せるふとした笑顔とか、芯は変わらないですけど、より人間らしくなったというか。薫への突っ込みもあるし、面白いところも増えています(笑)。
水谷 そう?(笑)
寺脇 僕自身は、「相棒」を離れていた間の経験から、どうやったら一番伝えられるのかということに重点を置くようになりました。もちろん、辞める前の薫でも考えていたのですが、より実感したといいますか。いまは見てくださる方がどう感じてくださるか、テーマをどう受け取っていただくかを第一に考えますね。〝伝える〟ことが大事だと、改めて思っています。
——右京の変化についてはどう感じられますか?
水谷 これはね、わからないです。意識しちゃったらわざとらしくなりますしね。むしろわからないほうがいいと思います。変わるときは自然に変わっていきますし、それが魅力的に変わって行ったらいいなと思うしかないですね。
寺脇 薫が復帰してからの2人は、〝元通りになった〟というより〝経験を積んだ2人がまた新しい相棒になっている〟というのがいいなと思います。
水谷 そうね。作る側も毎回新鮮にやっていますが、見てくださる方もそう感じてくださるからこそ、長く続いているんでしょうしね。どうしたらより楽しんでいただけるかは、常に考えています。
——前シーズンで、ホームズ風のインバネスを着たり、コナンくんの名前が出たりしたのも、その一環ですか?
水谷 もちろん脚本にあったわけですけど、「僕が見る側だったら楽しいだろうな」と思いながらやっていました。
寺脇 「相棒」は、「本当に同じドラマなの?」というくらい、毎回違う冒険をしていますよね。これからも、僕らの心がどう動いていくのか、ワクワクできるのか。
水谷 さあ、この先、何が出てきますかね(笑)。
今年3月、動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」で配信された「相棒」シリーズ史上初となる長編配信オリジナル作品「相棒 sideA/B」。ひとつの事件を右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)、それぞれの視点で追いかけた「sideA(右京編)」と「sideB(薫編)」で構成されているが、2つの物語に衝撃のエンディングがプラスされた完全版「相棒 sideX」の配信がスタートしている。配信ならではの重層的な仕掛けや大迫力のアクションなど、見どころ満載のストーリーを楽しみたい。