木挽町とは、現在の東京・歌舞伎座がある辺りの地名のこと。映画『木挽町のあだ討ち』は、同地を舞台に繰り広げられた「仇討ち」をめぐるミステリー仕立ての時代劇。原作は直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子による話題の同名小説。長尾謙杜が演じるのは、父の敵を討つ藩命を背負った17歳の武士・伊納菊之助。対する北村一輝は、菊之助と懇意にしていながら主人をあやめて逐電した伊納家の元下男・作兵衛に扮する。両者はどんな思いの中で刃を交わしたのか。心震えるクライマックスに至るまで深い交流を重ねた彼らの共演トーク、じっくりご賞味あれ!
2月27日(金)公開
――時代劇でお2人の共演となりますと、同じ東映京都撮影所製作の『室町無頼』(入江悠監督)が思い出されます。
長尾 はい、それが最初ですね。
北村 もう懐かしいね。
――その『室町無頼』では北村さんが室町幕府の要人役で、板輿の上に乗る官僚。一方、長尾さんは無頼の1人を演じて、着るものはボロボロ。北村さんとの身分差も大きく、言葉も交わされませんでした。
北村 (長尾を見て)ホント、寒そうな格好をしていた人だったよね。びしょ濡れだし、ドロドロの泥まみれ(笑)。
長尾 はい、寒かったです(笑)。
北村 俺は、着物の下にヒートテックも着させてもらっていたから、もう暑い暑い!
長尾 うらやましいです(笑)。時代がもう少し後だったら、甲冑とか鎧とか着込めたと思うんですけど。
北村 可哀想だったよね。
長尾 地面は濡れているし、着物の中にインナーを着たらバレますし、で(笑)。
北村 そういう俺らが今回、正反対の身分で共演っていうね(笑)。
長尾 はい、今回はきれいな衣装を着させていただきました(笑)。「汚し」のメイクもなかったですし。でも、北村さんは山口馬木也さん(菊之助の父・伊納清左衛門役)との回想シーンでびしょ濡れ、泥まみれになっていたじゃないですか。その時僕は家の中にいて、何ならスタッフさんから「そっちへ行くな」と言われていたんですよ。「汚れ
ちゃダメ」って(笑)。そこも『室町無頼』とは全く違いましたね。
北村 ちなみに、馬木也はあのシーンのことを「人生で一番死ぬかと思った」と言っていたよ(笑)。1回撮ると血のりが雨で流されちゃうから、何時間も、濡れて起きて、濡れて起きての繰り返しだったから。
長尾 すみません、僕は座敷でずっと見ているだけでした(笑)。
北村 見ているだけじゃないでしょ! ストーブに当たっていたじゃん。俺らが寒い中、地面に転がっている時に(笑)。
長尾 すみません、そうでした(笑)。でも、スタッフさんから「3時間くらい空きます」って言われていて。なので、ストーブの横で見守らせていただきました(笑)。
北村 3時間だっけ? もっと長く撮っていた気がする。何度もやったからね。
――そんなお2人は、この映画の冒頭でいきなり問題の「仇討ち」場面を披露されます。迫力のある長い立ち回りでした。
北村 あの立ち回りも、完成品よりももっと撮っています。かなり長く。やっぱり、今回はこの映画がミステリーということもあって、謎解きの部分も含めて結構な分量を撮る必要がありましたし、しかもそれをテンポよく見せなければなりません。
長尾 (北村の説明にうなずいている)
北村 作兵衛の立ち回りでいえば、最初はものすごく悪い奴という印象で登場してくる。でも、回想シーンで見られる昔の作兵衛はすごく優しい顔をしている。原作を読み進めていた途中もそう思っていたのですが、この2つの作兵衛を両極端に見せたら面白くなるだろうなと。そうすれば「勝ち」だろうなって、最初はそう思っていたんです。でも、原作をさらに読んでいき、加えて脚本となったこの映画の物語が自分の中に入っていくと、それでは表面上だけの面白さになってしまうのではないか。作兵衛は馬木也が演じた伊納清左衛門とも、その息子の菊之助とも仲が良かった。そこには主君への忠義が絶対的にあるわけで、その忠義を大事にしていくことが大事なんじゃないかとなって、そこから考え方を変えました。いい奴、悪い奴という表面的な対比だけでは、やっぱり見せきれないと思ったわけです。
長尾 (深くうなずいている)
北村 作兵衛の目線から見ていたこともあるのですが、長尾くんを見ていると「おぉ、どんどん立派になっていらっしゃる」みたいに思えましたね。実をいうと、「決まるコ」って俳優でも少ないんです。でも、長尾くんは「決まる」んです。「菊之助、キマってるよ!」って(笑)。
長尾 嬉しいです! ありがたかったのは殺陣をしっかり事前に組んでいただけたことです。おかげで、あの「仇討ち」を演じられたところはありますし、本気の「作兵衛を殺すぞ」という目線や顔つきも自然とつくることができたと思います。「殺し合い」の迫力もちゃんと出せたんじゃないかなって。あのシーンって、いろんな意味で「別れ」
のシーンじゃないですか。その「はかなさ」も出せているんじゃないかって思います。同時に菊之助にとっては武士としての「晴れの舞台」でもありますから、そういうバランスも考えながら演じていました。
北村 いや、見事でしたよ。だから作兵衛としては「菊之助さま、立派になられた」みたいな気持ちになるわけです。
長尾 ありがとうございます。
<続きは、日本映画ナビVOL.121をご覧ください。>
文/賀来タクト
写真/木村直軌 文/賀来タクト ヘア&メイク/[長尾]yuka(JOUER)[北村]安井朋美(FACE-T) スタイリスト/[長尾]菅沼愛(TRON) [北村]高塩崇宏 衣装/[長尾]ジャケット¥132,000、シャツ¥41,800、パンツ¥44,000(ガラアーベント/サーディヴィジョンピーアール/03-6427-9087)その他スタイリスト私物
原作/永井紗耶子 『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊) 監督・脚本/源孝志 出演/柄本佑、長尾謙杜、 瀬戸康史、滝藤賢一、山口馬木也、 愛希れいか、イモトアヤコ、 冨家ノリマサ、野村周平、 高橋和也、正名僕蔵、本田博太郎、 石橋蓮司、沢口靖子、北村一輝、 渡辺謙
東映配給 2月27日公開 Ⓒ2026 映画『木挽町のあだ討ち』 製作委員会
ながお・けんと
2002年8月15日生まれ、大阪府出身。21年なにわ男子としてデビュー。演技面では近作に映画『室町無頼』『おいしくて泣くとき』『俺ではない炎上』『恋に至る病』(25 年)、テレビドラマ「王様に捧 ぐ薬指」(23年)などがある。
きたむら・かずき
1969年7月17日生まれ、大阪府出身。主な出演作に映画『室町無頼』『でっちあげ 〜殺人教師と呼ばれた男』 など。現在『たしかにあった幻』(2 月6 日)『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』(3月 13日)が公開待機中。
